奥さんがいながら、他の女性と体の関係を持つことに何の罪悪感も感じていない、生まれる国か時代を間違ったんじゃないかというような男性が世の中には存在していますが、私の友人もそんな男でした。
貞操に関する考え方がちょっと現在日本人離れしているだけの、顔もスタイルも平均的な男です。私の会社よりもちょっとだけ名の知れたスポーツ用品メーカーに就職していたので、給与は私より少しばかり多くもらっていたと思いますが、だからといって女性からモテているということはなかったと思います。
そもそも結婚前の友人に対して、特別遊んでいる男という印象を持ったことがなかったので、彼が不倫相手の女性の話をし始めた時は驚きました。
私が友人から不倫しているとカミングアウトを受けた時に、1番最初に思ったことは、奥さんにバレたらやばいんじゃないかということです。友人とは大学が違ったためそこで出会って付き合ったという奥さんとはほとんど交流がなく、結婚式で会ったきりぐらいだったのですが、それでも奥さんが趣味でキックボクシングを嗜むほどの格闘技マニアだということは知っていたので、血を見ることになるのではと本気で思いました。
バレるバレない以前に不倫などすべきではないことは重々承知でしたが、友人は既に不倫中で、食事やデートだけではなくホテルでの逢引きまでがっつりやっているというのですから、バレる前にやめとけと話す以外にありません。相手は独身女性だと聞いて、増々友人に対する評価は下がりましたが、そこに妬みからくる感情が全くなかったのかと言われると自信はありません。
友人はバレたらやばいから遊びならやめるべきだという私に、バレないから大丈夫だといいました。不倫のスリルに完全に酔っているその姿は、まるで昼ドラのヒーローといった感じでしたが、奥さん対策に用意したとドヤ顔で彼がダミーのスマホを出したのを見て、本人もドラマの登場人物になった気分でいるのではないかと考えを改めました。
スマホの本体も安いものではないだろうに、不倫のためにここまでするのかと衝撃を受けつつ、格安スマホであることにしょっぱさも感じたりしつつ、その時には早くも私は諦めの極致に達していました。
クレジットカードは家に明細が届くから、ホテルのお金は現金を使っているのだということも、出張や有給休暇を上手く使って不倫相手の女性と会っているのだという彼の言葉も、私には既にどうでもよいことでした。この調子なら何を言っても関係を切る気はないだろうとわかりましたし、せいぜい奥さんにバレた時に、あざを作るくらいで済めばいいなというくらいです。
不倫はあっさりとバレてしまう。。。
それから半年後くらいに、家に入れないから一晩泊めて欲しいという友人を、雪の夜に拾いました。顔にあざは作っていませんでしたが、友人はお尻を押さえていて、私は奥さんの趣味であるキックボクシングがさぞや活かされたのだろうなとしみじみしました。
私がクッションを貸さなかったので、彼は立ったまま、不倫がバレたことを訥々と話し始めました。色々対策をしていた割にはバレるのが早いな、2人でいる所を見られたのかなと考えていたら、なんとパンツでバレたそうです。
朝履いていったパンツと、柄は同じでも使用感が若干違っているパンツを洗濯に出されて、浮気を疑うようになった奥さんに、罠を仕掛けられたのだそうです。奥さんがこっそり混ぜた、タグに名前の書かれたパンツに気付かず、新品のパンツを洗濯に出してしまったことが、決定的なバレに繋がったとのことでした。
使い古しのパンツと新品のパンツの質感の違いで気付いた奥さんの、探偵並みの鋭い洞察力には尊敬の念を禁じえませんが、パンツを履き替えるような行為をしておいて、単純に新品との交換だけで済まそうとするなど警戒心が足りなすぎるというのが正直な感想です。
それから何度も謝って、浮気に使っていた若いころのへそくりも全額献上して、なんとか離婚の危機を脱することができたようですが、それからずっと白のブリーフしか履かせてもらえないようになったと聞いて笑ってしまいました。おしゃれな下着を履けなくなって、ようやく彼は日本男児の貞操観念を取り戻したようです。