「不倫をしたい」を思ってする人も中にはいるでしょうが、大半の人は偶然や何かの切っ掛けですよね。私もその一人で、運が良いのか悪いのか、数年前まで付き合って別れた女性とは不倫関係でした。私の方が独身だったので、当時はW不倫ではなかったのですが、それがかえって燃える切っ掛けとなったのでしょう。
出会いは、私の父親が高齢で某病院に入院し、そこで准看護師として働いていたのが彼女でした。当時、私は派遣社員で彼女も正看護師ではないという共通の立場がありました。
何度か会話をしている内に、その事実を知り、そこで私は利用しようと思ったのです。准看護師は病院に不満があるはずなので、もしかしたら誘いに乗るかも? ダメ元で、「親父が元気になるならデートして下さい。ダメでも最後のお願いだとして、デートして下さい」と。
すると、派遣社員という立場が初めて効果を発揮したのです。彼女も准看護師という立場で社会的に不満があったのでしょう。簡単に誘いにOKし、それからは何度かデートを重ねると、彼女は突然、既婚者だという事を告げて来ました。年齢が30代前半なので、何となく結婚していると感じていましたが、普通はデートをしないものですよね。
しかし、彼女は私の熱心な誘いに根負けした、というのです。否、それは正確には違くて、私は他の看護師女性にも声を掛けていますし、何なら出会い系サイトや合コンも頻繁に利用している男です。声を掛けてデートに誘うのは日常的な事で、それが高じて会社が居辛くなり派遣社員にまでランクが下がった、典型的なダメ男なのです。
その事実を伝えようか悩んだのですが、准看護師ってデリヘルでもないパターンですよね。デリヘルはナース姿の看護師ばかりです。だからそれはそれで、興奮するのも事実ですし、相手が既婚者ならダラダラと続けるには最高だと私は思ったのです。しかし、それがちょっと甘い考えだったのです。
病院で働く看護師って、最初は綺麗に見えますし、男性なら憧れるものです。だって、「白衣の天使」という言葉もあるぐらいですから。しかし、実際には夜勤や仕事ストレスが溜まるのか、あまり良い相手とは言えないのです。それに、20代前半女性なら綺麗でしょうが、30代前半にもなると、同年代女性よりも少し老けているのでは、と感じるほどの見た目なのです。
だから、関係を切りたいと思っても、親父の看病で病院には行かなければなりません。すると、彼女と顔を合わせる機会も増えていきますよね。
彼女は私と会いたいから、時間の都合を作って、病院に来ていると錯覚しています。私は、単なる派遣社員なので、家族の中でも最も時間都合がつきやすいだけなのです。だから、少し素っ気ない態度を取ろうとするのですが、それはまるで親父が人質として捕らわれているようで、あまり強気には出られません。
親父も早く元気になれば良いのに、ダラダラと入院が長引きました。一応、黄疸が出てそれが切っ掛けで入院なのですが、親父も私の父親なので、スケベ根性があるのでしょう。若い看護師に囲まれる生活もまんざらではないのでしょう。その中にいる、一番太っている天使が、私の今の不倫相手だとはもちろん、告白する勇気はありませんでした。
ある日、いつものように某大手ショッピングモールで、中年同士がデートをしていたら、彼女が同じ病院に勤務する女性に見つかってしまったのです。
私もその彼女の顔を知っています。なぜなら、以前に私が声を掛けて失敗したからです。ここから、天使と派遣社員の関係は一気に醒めていきました。もちろん、彼女はその後も親父をしっかり看病していますし、私も見舞いには行っていました。
時には、親父を心配するフリをしながら、ベッド越しに彼女の肉付きの良いお尻を何度も触ったりするのです、無反応です。本来なら、准看護師でもどんな時も、きちんと対応するべきですよね。私は、大事な患者の家族なのですから。
このような不倫関係なので、いざ終わりになるのは呆気ないものなのです。最後にはラインで「お大事に」と簡単な別れ言葉があるだけです。
しかし、それでも病院に見舞いに行くと、太った天使がいるのです。親父は黄疸で食事が出来ないのでやせ細り、代わって彼女は逞しくなっています。よく見ると、愛想も悪い中年女性なのに、なぜ私は彼女に声を掛けたのか? きっと、親父のいる前で浮かれていたのでしょう。
初めての父親の看病で、また一つ私はダメ息子の健在ぶりをアピールした事になりました。