私はニューヨークのコロンビア大学に進学したのですが、最初の住居はキャンパス内にある大学の寮でした。
9階にある部屋に住んでいたのですが、同じ9階の端の部屋に韓国からの留学生が住んでいて、その人の誕生日パーティーに招待されて部屋に行って、その時に知り合いました。彼は素朴な感じの人で、知り合ってから廊下で出くわしたりした時に話をしたりしていました。
そのうちに彼は私の部屋に遊びに来ることが多くなって、私は彼に好感を持っていたので、自然とボーイフレンドとガールフレンドの仲になりました。
その時にはまだ彼にテキサス州のヒューストンに住む許婚がいることを知りませんでした。
韓国では男性には徴兵があって、それを免れるために彼の両親が、彼の父親の大学時代の同級生で、アメリカに住んでいて、アメリカの国籍を持っている娘と一緒になればグリーンカードが取得することができて、ちょうどいいのではないかということで、将来は結婚することになっていたのです。
そんなことは全く知らず、とても楽しい時間を一緒に過ごして、夏休みには一緒にカナダへ旅行へ行ったりしました。
ところが、冬になると彼の母親がソウルからニューヨークに来るということになって、なんだか変なムードになっていました。彼は母親と一緒に冬休みに許嫁がいるヒューストンに行って、そこで結婚してしまったのです。
私は大好きな彼が既婚者に突然なってしまったことが信じられませんでした。彼も、グリーンカードのための結婚だということで、愛情は私にあるといい、結婚してからも私の部屋を訪ねてきて、私は追い返すことができませんでした。
彼はもう結婚しているのだら、これ以上関係を続けることは不倫ということになるということは知っていましたが、突然、結婚したからといって、気持ちが変わることがなくて、相変わらず関係は続いていました。寮に住む友達からは、これ以上関係を続けることは不倫になるのだから、会うのはやめたほうがいいとアドバイスされたりしました。
しかし、私は結婚した彼を非難しながらも関係を止めることができませんでした。不倫とわかっていながらも、彼を愛しているという気持ちは変わらなかったのです。
でも、学生の間は寮に住んでいて、会うことができるけれども、それが終わったら、彼はヒューストンに行ってしまうのだろうと思ったら、結婚した彼のことを許すことができませんでした。愛おしいという気持ちと憎いという気持ちが入り乱れて、頭が変になりそうでした。
不倫に未来はないということが心に迫ってきて、いっそ関係をやめてしまえばいいのだろうと思いました。彼は私が優しくすると結婚した女性とも仲良くしていて、私が冷たくすると慌てるようなところがあって、彼には私は妾になるつもりはないと言い切りました。
夏休みになって、私は寮を変わることになりました。そして、ヒューストンに行っているはずの彼がニューヨークに戻ってきて、妻を置いて大学でサマーセッションを受けるということで、やっぱり私のところに来るのです。私は妻の元にいたくない彼の気持ちを考えると自分のことを愛してくれているのだろうと思って、ちょっと嬉しくなりました。
結婚しても愛しているのは君だと言う彼の気持ちもわからないではなかったのです。なぜなら、結婚してもやっぱり彼のことが好きだと言う自分の気持ちがあったからです。
でも、そんな関係を永遠に続けていくことは無理だと言うことだけははっきりしていて、彼に問い詰めました。二人の女性を同時に持つことはできないのだと。そして、彼と会うことをやめました。彼はグリーンカードを手にしたら離婚すると言いました。
まさかそれが本当のことになるとはその時にはわかりませんでした。