大学生のときコンビニでアルバイトをしていました。そのバイト先のコンビニは、30前半の村上夫婦が運営していました。村上夫が店長で、村上さんの奥さんの亜美さんが副店長でした。
村上店長は、アルバイトをあんまり信用していませんでした。嫌な人というわけではないですが、「ほかにやることないの？」と思うほど、足しげくバイト先に来ており、「トップが来ないと、バイトもさぼるだろう」なんてことをちょくちょく言っていました。
この村上店長は、どちらかと言えばかっこいい感じでした。もう30を過ぎているとはいえ、背が高く、整った顔立ちをしていたのです。
バイト先に来て仕事をしていることもあるのですが、特に何もせず、バイトと楽しく話していることも多いという人でした。また店に来ないで家でゆっくりしているなら、バイト先でみんなと話している方がいい、なんてことも言っている人でした。
しかし、この村上店長はバイトのフリーター女子と不倫してました。
経緯は単純です。フリーターの二十歳の女の子が入ってきて、その子がかわいく、村上店長は気に入ったようでした。その方は夜勤だったのですが、ちょうどそのころ、夜勤の人が二人もやめてしまい、人手不足に陥っていました。
そこで村上店長が夜勤に出て、人手不足を補うことになったのです。
シフトを組むのはもちろん村上店長ですので、できれば若い女の子と……、とおもったのでしょう。夜勤は二人で行うのですが、村上店長が出る日は、その若い女の子のフリーターがパートナーでした。
その二十歳の子は京子ちゃんと呼ばれていて、かわいらしい外見をしているうえに、よく笑う女の子でした。初めは不倫なんて当然疑っていませんでした。アルバイトの女の子とコンビニの店長がいくら仲良しだからって、普通は不倫なんて疑いません。
ですがちょっとおかしいなとは思っていました。たとえば一度、店長の車の中で、店長とその京子ちゃんが楽しそうにおしゃべりをしていたんです。どうして車の中で？と疑問に思いましたが、やはり自分は仕事の話をしているんだろうと思いました。
またそれを同僚に話すこともはばかられました。そんな風に疑っていると知られると、自分が京子ちゃんのことを好きで、そのせいで店長に嫉妬しているんじゃないか、なんて思われそうで怖かったのです。
ですがとうとう決定的な出来事が起こりました。
職場にはもう一人女の子がいました。安藤さんという30歳くらいの女性で、いつもニコニコしているおしゃべりな女性でした。すでに結婚していて、パートとしてコンビニに勤めていました。
この安藤さんも夜勤の人で、時々京子さんと一緒になりました。その安藤さんが、「京子ちゃんが言ってたんだけどさ、なんか店長と付き合ってるらしいんだよね」と言うのです。さすがに驚きました。
京子ちゃんはまだ若かったこともあって、安藤さんに内緒だけど、と内緒にしてもらえるわけもないのに真相を話していたのです。
その後、副店長の亜美さんがコンビニやめる、という噂になりました。
また京子ちゃんもコンビニを辞めるということになったのです。
自分はバイト先で一番仲の良かったやつと、店長を問い詰めてやろうぜ、と盛り上がって、店長に訊いてみました。
京子ちゃんと関係を持ってしまったと聞きましたが……、と。
すると店長は「確かに関係は持ってしまった、申し訳ない」と神妙そうな顔をしていました。ですがそれでは終わらなかったのです。
ある時バイト先に行くと、副店長の亜美さんが泣き叫んでいたのです。
お客さんもいるのにです。自分も友人も呆然としました。
亜美さんは店長に向かって、不倫をなじるようなことを言って、また店長と京子ちゃんの性的な関係を大声で非難するようなことまで言っていました。
店長は大慌てて、亜美さんを事務室に引きずり込もうとしていましたが、亜美さんが暴れて相当難航していました……。
